ムスカリンM_2受容体の結晶化の試みを継続している。阪大月原教授・菅氏の協力でアニーリングを試みた。結晶の質が向上する傾向が見られたが、構造解析へ進むには至っていない。ムスカリン受容体は細胞内第3ループ(i3)が長い(160-240残基)。他の多くのGPCRのi3は短く、M_2-i3の根元以外の大部分を削除してもアセチルコリン結合能やGタンパク質活性化能は変わらない。M_2-i3は独立したサブドメインで、一定の構造を取る可能性が考えられた。M_2-i3を大腸菌で発現させ円2色性を測定したところ、予想に反して2次構造は認められなかった。阪大白川教授・立石氏の協力で1次元NMRを測定したところ、rigidな構造を作らないことが判明した。さらに、野生型M_2受容体とi3を欠損させたM_2受容体を発現・精製しその円2色性の差を調べると、i3が2次構造を作らないことが示された。これらの結果より、M_2受容体の長いi3はフレキシブルな構造として存在すると推測した。M_4受容体i3の色々な部分を切除した変異体は、同じような発現レベルで、同様なリガンド結合活性を示した。この結果は、長いi3がrigidな構造を取らないというM_2受容体の結果と符合する。M_4変異体のダイナミン依存性細胞内移行は、i3の削除部分に依存して、影響を受けない場合と約1/2に減少する場合がある。予想に反してi3の根元以外の殆どを削除した変異体でも野生型の半分程度のダイナミン依存性細胞内移行が観察された。ダイナミン依存性細胞内移行に関わる部位がi3以外にも存在する可能性を示している。細胞内移行したM_4受容体は、アゴニストを除くと細胞表面に復帰する(リサイクリング)。リサイクリングはi3の存在に依存していた。i3を部分切除したM_4受容体のリサイクリングを調べ、リサイクリングに必要な部位の同定を試みている。
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