研究概要 |
本研究は,現在の日本における法使用行動に関する調査研究の一環として,社会階層が市民の法使用行動に与える影響を明らかにするものである.法使用行動とは,市民が法的機構を利用して法的サービスを獲得する行動であるが,この法的サービス獲得の機会は当然にすべての市民に対して平等に開かれているとはかぎらない.むしろ,それは,職業・学歴・所得・性別等によって構造化される社会階層ごとに異なる形で分布しているのではないかと推測される.しかし,このような法的サービス獲得機会の階層間格差の実態については,日本ではこれまで,若干の断片的・小規模の調査があるにとどまり,その全体像を示す信頼できるデータは得られていなかった.法的サービス獲得機会が階層間でどのように分布しているのか,明白に法的サービス獲得機会が狭められている階層はないか,そしてそのような階層間格差が市民の法使用行動にどのようなメカニズムで影響を及ぼしているのかを明らかにするため,6年間の研究の第1年目である今年度は,法使用行動の社会階層性に関するモデル構築を行うとともに,探索的なデータの収集を目的として,予備調査のさらに前段階の調査を実施した(『困りごと・もめごとの相談についての調査』,平成16年2月末実施). 研究の第2年目にあたる平成17年度には,今年度実施した探索的調査の解析結果をふまえて,法使用行動の社会階層性に関するモデルの修正および本格的な予備調査の企画・実施を行う予定である.
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