1.本研究は、現在の日本における法使用行動に関する調査研究の一環として、社会階層が市民の法使用行動に与える影響を実証的に解明することを目的としている。 2.6年間の研究の第2年度に当たる2004(平成16)年度は、初年度における(1)法使用行動の階層性に関する理論枠組みの構築作業、および、(2)問題探索的な目的を持つ「予備予備調査」の実施(『困りごと・もめごとの相談についての調査』。2004年2月実施)を踏まえて、次の2つの作業を行った。 第1は、上記「予備予備調査」の結果を分析する作業である。その結果、i)もめごと経験と回答者の社会的属性についで、年齢・学歴・職業に関して有意な差がみられること、ii)相談機関としては警察が重要な役割をはたしていること、iii)弁護士会の法律相談の利用は少ないが、弁護士事務所の利用が多く、しかもその際、第1回目の利用が多いこと、iv)もめごとに遭遇したにもかかわらず格別の紛争解決行動をとらないケースでは年齢について有意な差が見られること、など興味深い知見が得られた。ただし、「予備予備調査」の回収率が予想よりも低いなど、いくつかの課題も確認された。 第2に、この「予備予備調査」の結果を踏まえて質問票および調査方法に改善を加え、2005年1月に「予備調査」を実施した。回収率は40%とかなりの改善が見られ、「本調査」に向けての有力な資料が得られた。 3.6年間の研究の第3年度に当たる2005(平成17)年度は、いよいよ「本調査」の第1ステージが実施される。すでに実施した「予備調査」の結果をなお詳細に検討し、それに基づいて調査票および調査方法にさらに改善を加えた上で、万全の態勢で本調査を実施する予定である。
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