研究概要 |
1.本研究は、現在の日本における法使用行動に関する調査研究の一環として、社会階層が市民の法使用行動に与える影響を実証的に解明することを目的としている。 2.6年間の研究の第4年度に当たる2006(平成18)年度は、以下の研究を行った。 (1)2006年3月から5月の期間、全国の11,000人を対象とする調査を実施した。有効回答は5,330票、回収率は48.5%であった。 (2)全国調査の補充調査として、2006年8月から10月の期間、いわゆる司法過疎地域である岩手県釜石市の住民1,000人を対象に同種の調査を実施した。有効回答は706票、回収率は70.6%であった。また、関連機関へのインタヴュー調査を行った。 (3)全国調査および釜石調査について、法律問題類型および相談機関の再コーディングなど今後の分析の基礎となるデータ・クリーニングの作業を行った。 (4)以上の作業と並行して、全国調査および釜石調査のデータの端緒的な分析作業を開始し、その結果について他の計画研究班のメンバーと意見交換するとともに、領域研究全体の研究会で釜石調査の暫定的な結果について、以下の点を発表した。(1)各相談機関の窓口には多くの相談者が訪れており、住民は日常的にさまざまなトラブルやもめごとに遭遇していること、(2)とくに多重債務問題が深刻な問題となっていること、(3)この多重債務問題をめぐって関係機関および公設法律事務所の間で効果的な役割分担を伴う法律相談ネットワークが構築されており、問題の解決に大きな成果をあげていること、(4)司法過疎地域における公設法律事務所の設置は地域の法律問題解決の選択肢を拡大し、法律相談ネットワークの実効性を高める効果的な要因となっていること、などである。
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