本研究は、現在の日本における法使用行動に関する調査研究の一環として、社会階層が市民の法使用行動に与える影響を明らかにするものである。 6年間の研究の最終年度どなる2008年度は、これまで行った全国調査および釜石調査についてより深めた分析を加え、社会階層と法使用行動の連関、法的サービスへのアクセス機会の構造的分布を解明する作業を行った。その結果、次のような重要な知見が得られた。第1に、大都市のみならず地方都市でも法的問題やトラブルは発生しており、その解決のために各種専門機関・専門家の助言や援助を必要とするニーズは大きいと考えられる。第2に、にもかかわらず地方都市では各種専門機関・専門家の数が少ないため、それらの法的ニーズは適切に充足されていない可能性がある。第3に、弁護士が少ない地域への弁護士の配置(事務所開設)は住民の法的ニーズを充足する重要な機能を果たしており、そして、その効果は、法的サービスの提供拠点(事務所)が住民に空間的・時間的に近接した地点に置かれるほど効果的であると考えられる。 以上の知見の一部はすでに論文等の形で公表しているが、さらに分析の精度を高め、2009年度に刊行予定の本特定領域研究(「民事紛争全国調査」)全体の最終成果物に独立の論文として寄稿するとともに、今後の政策提言等に役立てていきたい。
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