本研究では、わが国で初めて、全国の定量的データに基づいてトラブル経験者の相談機関探索行動の実相と、その中での司法書士使用の実態を明らかにした。トラブル経験者にとって、司法書士は相談機関としての存在感はまだ大きくはないが、従来の主要業務に近接したトラブルに関して重要な選択肢となっていること、まだ法的な助言を期待する機関として認知されてはいないが実際には法的助言提供がなされていることが経験的に明らかになった。他方で、トラブル経験者の司法書士へのアクセス・ルートは、本人を含めて概して近しい関係者の紹介に限られており、複数の相談機関の中でのトラブル経験者の助言探索行動の中で規則的な流れを形成するにはいたっていない。司法制度改革の中で機能拡充が図られた司法書士に対して、今後、トラブル経験者のアクセスの機会を増加させる仕組み、また司法書士のもとにたどり着いた事案を適切に処理していくための多様な機関との協働の工夫を検討する必要が指摘されうる。
|