本年度は、平成17年度の研究計画に沿って、まず、前年度末に実施した市民の弁護士使用行動の予備調査から得られたデータの分析作業をおこなった。当初の研究計画では、それをふまえて、そこでの知見を参考にしながら本調査に使用する質問票作成とサンプリング設計に進む予定であった。しかし、総括班レベルでの特定領域研究全体の見直し作業の結果、法専門家使用行動調査を担当するB02班の研究方針が変更となったため、本計画研究にも当初の計画からの大きな変更がもたらされた。すなわち、B02班の調査対象は独自のサンプルを抽出するのではなく、B01班のサンプルの中の法専門家利用者にたいして量的ではなく質的な調査にするというものである。そのため、弁護士使用に関する一般人の大量サンプルを予定した質問票作成とサンプリング設計についての検討作業はおこなわず、B01班の機関利用行動調査の一環としてのそれに限定することとなった。このような方針変更にともない、本年度の主たる研究活動は、弁護士使用行動の質的調査に向けた準備作業となった。 まずは、B01班が主導する機関利用行動調査を通じて弁護士使用行動の定量的なデータを取得するために、B01班とB02班との5回にわたる合同研究会を通じて、市民の弁護士使用に関する質問を機関利用行動の調査票に適切に反映させる作業をおこなった。加えて、質的調査実施のための作業に取り組んだ。調査方法が質問紙中心から面接中心へと変わることから、これまでに構築してきた理論的モデルをふまえつつ、さらなる文献研究を通じて新たな調査方法にマッチした定性測定モデル構築の作業を継続した。その部分的成果は、2005年7月の国際法社会学会パリ大会での報告、及び「弁護士の役割と展望」と題した論考(和田仁孝編『法社会学』所収、近刊)にまとめられた。
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