本年度は、平成18年度の研究実施計画に沿って、弁護士使用行動調査の本調査を実施し、主目的であるデータ収集をほぼ完了した。研究活動は2つの方向からおこなわれた。第1に、量的なデータ収集と分析である。ここでは、本年度の初め頃に調査実施機関からあがってきたB班統一質問票により実施された法専門家を含む相談機関利用行動調査のデータから、弁護士使用行動に関するデータを取り出し、クリーニングをおこない、単純集計が可能な段階にまで至ることができた。なかでも、データのクリーニング作業はリコードなど研究者の専門的判断を要するものだったため、きわめて多大な労力を費やした。平成18年7月から平成18年2月まで、B01班とB02班に属する研究者が合宿を含むつごう7回の合同研究会をもってデータセットの確定作業をおこなった。量的分析に関しては、クリーニング前のデータセットを用いた試行的な分析もおこなった。.その結果は、「市民のトラブル・問題処理における弁護士利用の実態」と題して、平成18年3月に開催された本特定領域研究の全体研究会において報告した。 第2に、質的なデータの収集である。当初の計画通り、B班統一質問票調査の回答サンプル中の弁護士利用者にたいする訪問面接を平成19年2月から3月にかけて実施した。実施にあたっては、BO_2班に属する早稲田大学班と大阪大学班と協力連携して全国各地に散在する調査対象者を分担して訪問した。また、質的調査のための理論枠組みとなる定性測定モデルの検討作業もB02班の研究会を通じて継続的におこなった。その部分的成果は「弁護士の役割と展望」(和田仁孝編『法社会学』(法律文化社、2006年12月)所収)である。
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