当年度においては、前年度に完了した弁護士使用行動調査によって収集したデータのうち、主として量的データの整理と分析をおこなった。まず、データ整理に関しでは、特定領域研究B班に属する他の計画研究の研究者との共同作業を通して、弁護士使用行動のデータを含む統一的なデータセットを確定した。それにもとづいて、調査票全体の単純集計を内容とする基本集計書の編集作業を完了した。平成20年度早々には基本集計書が公表される予定である。 データの分析に関しては、さしあたり、市民が弁護士事務所を利用する形態での弁護士使用行動から分析に着手した。分析作業の結果は4つの機会に発表した。ひとつは、平成19年5月に開催された日本法社会学会学術大会であり、二つめは平成19年7月にベルリンで開催された国際法社会学会である。そこでは、市民の弁護士へのアクセスの側面に焦点ををあてた分析をおこない、アクセスの実態と特徴について報告した。報告内容は特定領域研究ワーキング・ペーパー集の第一集と第二集に掲載されている。三つめは、平成19年9月の特定領域研究全体研究会である。ここでは、「市民のトラブル・問題処理における弁護士利用の実態:弁護士に対する評価を中心に」と題して、問題解決にとっての弁護士の有用性と弁護士に対する満足度の有り様を非法専門家への評価と比較して分析した結果を報告した。四つめは、平成20年3月初めに開催された特定領域研究国際シンポジウムである。ここでは、「市民の弁護士利用行動からみた弁護士評価の構造と特質」と題して、弁護士の有用性と満足度を従属変数として、その規定要因を探った結果を報告した。
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