研究概要 |
4月から7月にかけて、前年度までの理論的な研究成果と、特定領域研究A01班A02班合同の学生調査、予備予備調査、予備調査のデータを用いて、法行動経験と法知識や法関心の関係にいての一連の研究会や学会での報告を行った。そのうち日本法社会学会(2006/5/14於関西学院大学)では「法体験の法知識・法関心への影響」として報告した。法知識や権利意識の強い者がより司法システムを利用するという因果構造と、その逆の因果構造は併存していると考えられるが、法知識の拡散性、法体験の少なさを前提とすると、やはり経験が知識を増大するというモメントの方が強い傾向があること、このような状態の分析にあたっては理論的な行動モデルを精緻化した後、構造方程式モデルなどにより、両因果関係を含む分析モデルを適用する必要があることを明らかにした。この成果の上にさらに分析に進めた上で、Law and Society Association(2006/7/5-9於Baltimore, MD)では「Legal Experience and Legal Knowledge」と題する報告を行った。構造方程式モデルを用いたパス解析を用い、「法体験」が「法知識」よりも「法関心」を高め、さらに法イメージにも影響を及ぼす傾向にあること、「法知識」はネガティヴな「裁判イメージ」を強め、「契約に対する否定的イメージ」を弱める傾向にあること、「法体験」がある者は「法知識」に基づいた法イメージを有する傾向があることなどを明らかにした。 また、2004年度に実施した本調査データについては前年度から継続して準備してきた一連の基本報告書を2006年末までに出版した。いずれも特定領域研究A01班の松村良之、木下麻奈子、藤本亮、山田裕子、藤田政博、小林千博の共著によるもので、「現代日本人の法意識研究の理論モデルとリサーチデザイン」(北大論集57[3])においては理論モデル、リサーチデザイン、調査方法、調査票構成の骨格をまとめた。「現代日本人の法意識の全体像:2005年調査結果の概要」(北大論集57[3])では記述統計をまとめた。本調査に含みて実施した現代日本文化会議の70年代調査の追試結果については「「日本人の法意識」はどのように変わったか:1971年、1976年、2005年調査の比較」(北大論集57[4])でまとめた。A02班の調査結果と合わせ『紛争行動調査基本集計書』を出版した。
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