研究概要 |
本研究では,(1)磁場配向メカニズムの解明,(2)磁場を用いた新規材料の創製,(3)磁場配向方法の開拓を行った. まず(1)については,ブロック共重合体のミクロ相分離構造の磁場配向の検討を行い,その配向メカニズムを研究した.配向メカニズムとしては,相界面の鎖の異方性によるトルクタイプの磁場配向,磁気クラベイロンタイプの磁場配向,形状異方性による磁場配向が考えられたが,常磁性物質の導入により配向が促進されたことより,形状異方性による可能性が強く示唆された.高分子系の磁場配向に新たな可能性が開かれた.また,磁場下,超臨界二酸化炭素中でポリプロピレンを結晶化させることにより,汎用樹脂であるポリプロピレンの磁場配向に初めて成功した.これは溶融状態での構造形成の制御が,その後の磁場配向に大きく影響するというこれまでの仮説を裏付けるものであった. 次に(2)に関しては,液晶性ブロック共重合体の磁場配向により,複屈折が大きく,かつ透明性が高い光学フィルムを作製するのに成功した.従来複屈折と透明性はトレイドオフの関係にあり,透明性が高い配向フィルムの作製が困難であったが,今回はそれを克服することに成功した.また,ポリプロピレンの結晶サイズを小さくし透明化する核剤の磁場配向を利用してポリプロピレンの配向フィルムを作製したところ,良好な光学フィルムを得た. 最後に,(3)に関しては,動的磁場を用いることで,微粒子懸濁系の3次元配向に成功した.静磁場下では容易軸が,回転磁場下では困難軸が一軸配向することは良く知れているが,強度或いは周波数が変調された磁場(楕円磁場)を用いると,二軸性結晶(斜方,単斜,三斜晶系)の3次元配向が可能であることを見出した.この手法により,粉末試料から,単結晶X線回折像を得ることに成功した.
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