研究課題/領域番号 |
15086201
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
狩野 猛 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (30241384)
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研究分担者 |
丹羽 光一 北海道大学, 電子科学研究所, 助手 (20301012)
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キーワード | ハイブリッド人工血管 / 組織工学 / 内膜肥厚 / 流速 / 灌流圧 / LDL濃度 / 水透過速度 / 組織構造 |
研究概要 |
本研究の目的は、人工血管の移植後の遠隔期に起こる閉塞の原因となる内膜肥厚を阻止し、長期にわたり開存しうる人工血管を作成するための最適条件を見出すことである。そこで、先ず初めに多孔質膜上にウシ大動脈由来平滑筋細胞および内皮細胞を重層播種共培養して血管壁のモデルを作製し、これを用いて流れのない条件下で動脈硬化や内膜肥厚を引き起こすコレステロールの担体である低密度リポ蛋白(LDL)の取り込み実験を行い、LDLの培養液中における濃度と血管壁モデルの細胞により取り込まれる量との間の関係について検討した。その結果、LDLの濃度が1から20%の範囲では、濃度が高いほど、その細胞層内に取り込まれる量も多く、また、時間の経過と共にその量が増大する事が判った。続いて、市販のePTFEグラフトに同上の二種類の血管細胞を直接重層播種共培養することにより、移植された人工血管に形成される疑内膜と同様の壁構造を持ったハイブリッド人工血管を作成し、これを静置培養および循環灌流システムに組み込み、種々の血清濃度、流速(壁ずり応力)および管壁における水透過速度の条件下で培養し、細胞層(ほとんどが平滑筋細胞から成っている)の組織構造、細胞数、および厚みに及ぼすこれらの諸因子の影響について検討を行った。その結果、静置培養した場合のハイブリッド人工血管の細胞層は、培養日数の増大と共に肥厚し、血清濃度が1から20%の範囲では、濃度が高いほどその肥厚の程度が大きいことが判った。また、流速(壁ずり応力)および管壁における水透過速度の影響に関しては、これまで行った予備実験からは流れが遅いほど、そして水透過速度が大きいほど細胞層が厚く、細胞数も多くなるという結果が得られているが、これらに関しては、さらに実験を重ねて確認する予定である。
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