研究課題/領域番号 |
15086201
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
狩野 猛 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (30241384)
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研究分担者 |
丹羽 光一 東京農業大学, 生物産業学部, 助教授 (20301012)
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キーワード | ハイブリッド人工血管 / 内膜肥厚 / 流速 / 渦流れ / せん断応力 / 内皮細胞 / 水透過速度 / 平滑筋細胞 |
研究概要 |
(1)市販の内径3.0mmのePTFEグラフトにウシ大動脈由来平滑筋細胞および内皮細胞を重層播種共培養することにより作成したハイブリッド人工血管を用いて0.92mmから3.00mmへの急激な拡大管を形成し、これを循環灌流システムに組み込み細胞培養液を定常流で1週間循環還流して培養し、細胞増殖に及ぼす渦流れの影響について検討した。その結果、細胞増殖の指針であるところの細胞層の厚さは、流れが遅く壁せん断応力が小さい拡大管入口近傍の淀み点および環状渦の最先端にあたる再付着点近傍で最も厚くなっていることがわかった。この結果は、動脈硬化や内膜肥厚が流れが遅く壁せん断応力の小さい領域に起こりやすいという臨床学的データと一致するものである。 (2)イヌの総頚動脈に内径3mmで、水透過速度が大きく異なる3種類の人工血管、即ち、組織固定して作製したイヌの総頚動脈(GAグラフト)、市販のePTFEグラフト、自作のポリエステル布製グラフト(PEグラフト)を端端吻合により間置移植し、それらを1週から1年後に採取し、管壁における水透過速度の測定、走査電顕による内表面の観察、および細胞層の厚さの測定を行った。その結果、GAグラフトの内面は、12ヶ月後でもフィブリン膜で覆われており、内皮細胞は全く見られなかった。ePTFEグラフトに関しては、6ヶ月後ではフィブリン膜の部分と内皮細胞で覆われている部分が混在していたが、13ヶ月では全面が不規則な形状をした内皮細胞の単層で覆われていた。PEグラフトは、2ヵ月後でも整った形状の内皮細胞の単層で覆われていた。人工血管に形成された偽内膜の厚さは、移植前における水透過速度が生体血管のそれに最も近い値を示したGAグラフトで最も薄く(2μm程度)、水透過速度が最も大きかったPEグラフトで最も厚く、術後2ヶ月のものでも126μmになっていることがわかった。
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