研究概要 |
力学刺激を受けた場合の内皮細胞の応答機構を明らかにする観点から主に以下の3種類の研究を行った. 1.マイクロピラーを有するPDMS膜を用いた伸展刺激負荷 微細加工技術を用いてマイクロピラーを有するPDMS膜を作製した.この基質上では焦点接着斑の間のみに局所的に伸展を負荷することができ,焦点接着斑部にはひずみが作用しない.マイクロピラー上に内皮細胞を播種し繰り返し伸展刺激を負荷したところ,平面膜基質を用いた場合に比ベストレスファイバの再形成速度が遅くなった.また内皮細胞はピラー周辺部に焦点接着斑を形成し,伸展方向に対して直交する方向にマイクロピラー間をつなぐようにファイバを発達させた.これらの結果から焦点接着斑に作用する力が細胞骨格構造リモデリングに重要な役割を持つことが明らかになった. 2.細胞骨格阻害剤が焦点接着斑おおび細胞骨格の挙動に与える影響 微小管の重合阻害剤であるノコダゾールを内皮細胞へ投与し,アクチンフィラメントと焦点接着斑の挙動を観察した.葉状仮足は発達せず新しい焦点接着斑の発現も観察されなかった.この結果より焦点接着斑の発現には微小管が深く関与していることが示唆された.一方で焦点接着斑のスライド運動,消失に関して微小管は関与しておらず,主にアクチンフィラメントの収縮による受動的な運動であることが考えられた。 3.静水圧刺激負荷による細胞骨格挙動の観察 内皮細胞にせん断応力と静水圧を同時に負荷し,細胞骨格の挙動を調べた.その結果,内皮細胞の形態および単層構造維持には力学刺激の組み合わせが重要であることが明らかになった.またこの形態形成にはVE-カドヘリン発現の変化が主要な役割を持つことが示唆された.
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