研究課題
本研究においては、先進工業国において国民死因の極めて大きな部分を占める心臓および脳血管病の発症と進展メカニズムの解明を計算生体力学の手法で推進することを目的とする。特に、粥状動脈硬化症は、その前駆的変化ならび初期病変に極めて明瞭な局所性が観察されており、その原因の一つは血流のもたらす力学的影響と血管壁の生物学的反応の相互作用にあると考えられている。本研究では、このような力学的問題を計算力学の手法で解析するが、この際、血液は、流体である血漿と、変形しやすい固体である血球成分からなる複雑な流れであり、従来の計算流体力学の手法では解析が難しい問題が多い。さらに、その上、生体を構成する成分の力学的特性は非常に非線形性が強い。このために、一昨年度までの、いわゆる粒子法の開発と応用と、血流と血管壁の相互作用を解明するための、流体-固体連成計算手法の導入を基礎に、昨年度は粒子法の応用については、複雑な血漿流れの2次元モデル問題と、この中に、複数の赤血球および血小板の存在を仮定するモデルについて、とくに血球の物性と血流の分配比の問題、後者では、各種疾患血管モデルにおける壁振動(圧脈波)と流体運動(流れ)との相互作用を流体側にニュートン粘性流体、血管壁に圧肉線形弾性体近似を導入することにより解析した。本年度は、これらの開発された手法を現実的問題に適用し、血管内の流れと各種血管病の病因、進展機構などとの関連を検討する研究を行い、特に、大規模並列計算を用いた赤血球1万個のオーダーの計算を成功させることができた。
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