研究概要 |
関節疾患治療の新しい方向性を示す未来医療の1つとして,正常な自家軟骨細胞を生体外培養し三次元的に組織を再構築した後,損傷部位に移植する試みが臨床で始まりつつある.このような培養軟骨の臨床応用には組織形成度の評価,特に力学的側面からの評価が必要不可欠である.しかしながら培養軟骨のバイオメカニクスは発展途上の分野であり,培養軟骨組織の機械的特性は未だ明らかにされてはいない.そこで,細胞外マトリックスの力学特性評価モデルとしてアガロースゲル包埋培養法を用いてウシ軟骨細胞を三次元培養し,動的・静的環境下において圧縮方向の機械的特性を明らかにした.また広範囲での細胞外基質と機械的特性の評価が可能となることから両者の相関を調べた.アガロース-軟骨細胞培養体の培養期間に伴う平衡凝集体弾性率の変化,動的弾性率の変化を計測したととろ,平衡弾性率,動的弾性率は培養期間とともに向上したのに対し,損失正接は培養期間の増加に伴い減少する傾向にあった.これはアガロースゲル中に軟骨基質が産生されたことによりアガロース-軟骨細胞培養体中に占める固体相の割合が上昇したためと考えられる.次に各試料について硫酸化グリコサミノグリカンの含有量に対する平衡凝集体弾性率,動的弾性率(周波数0.01,5.0Hz)との関係を探ったところ,各弾性率と硫酸化グリコサミノグリカンの含有量には相関関係が存在した.特に平衡弾性率においては二段階の相関が存在した.アガロースゲル培養モデルを用いて軟骨細胞を培養したことにより軟骨基質の定量および機械的特性の評価を広範囲で行うことが可能となった.本モデルは圧縮特性以外の力学特性と細胞外基質の相関関係の検討においても有効であると考えられる.
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