研究概要 |
臨床応用可能な再生軟骨を作製する際には,培養担体(scaffold)と細胞を用いて三次元培養する方法が主流である.しかし,scaffoldを用いた培養には生体吸収性,細胞接着性また均一な細胞播種性の問題があるため,本研究ではscaffoldを用いず軟骨組織を再構築する手法の検討を行った.具体的には,ウシ正常関節軟骨から軟骨細胞をコラゲナーゼ溶液を用いて抽出し,10%のウシ胎児血清を含むF12培地を用いて初代細胞播種,引き続いて継代培養を行った後,分化培地中に軟骨細胞懸濁液を調整し,回転速度70rpm,回転半径1.25cmの旋回流れ下で1日培養を行うことにより軟骨細胞より構成される細胞凝縮塊を大量に形成させた.形成された細胞凝縮塊をクローニングリング中に集積させることにより円板状の軟骨組織様組織を形成させた.引き続き分化培地を用いて回転速度70rpm,回転半径1.25cmの旋回流れ下で3週間培養を行った後,組織評価を実施した.組織学的評価の結果,組織中には軟骨細胞が生細胞として均一に分布し,プロテオグリカンが産生されていることが確認された.また力学的試験の結果,本再生軟骨は力学的強度の面では生体軟骨細胞には及ばないが,生体軟骨細胞と同等の応力緩和特性を示すことが碓認された.またこの方法は自由な形状の軟骨組織を再構築させる方法としても有望であると考えられる.これらの結果から,軟骨細胞の細胞凝集塊を経由しての軟骨組織の再構築法は,軟骨細胞を壊死させることなく,均一な分布を保ちながら組織形成させる方法として有効であることが示された.
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