研究概要 |
本研究では骨格筋のマイクロ構造の力学特性と受傷時のマイクロ構造・組織の特性を実験的に解明し,骨格筋損傷を評価,予測可能な筋損傷解析モデルの定式化を行う.平成15年度はその第1段階として,傷害による筋組織損傷についての基礎的な知見を得るため,打撲傷とひずみ傷害による組織の微細形態変化と機能変化の相関について検討した. まず,家兎前脛骨筋にインパクタを衝突させ,打撲傷実験モデルを作製した.これを組織切片の顕微鏡観察による形態学的,病理学的評価と,等尺性収縮試験および引張試験による力学的評価を行い,以下の結果を得た.(1)傷害を受けた筋の組織観察を行った結果,大きく三つの重症度に分類可能であり,衝突エネルギの増加に伴い,より重度の組織損傷がみられた.(2)0.13Jを超えた衝突エネルギにより,筋収縮機能の低下,破断部位が衝撃部位(筋腹)での破断が見られ,両者の閾値はほぼ同程度であった.(3)傷害を受けた筋の破断荷重,破断伸展比及び破断までの吸収エネルギは重度の負荷の傷害により低下した. 次に,家兎前脛骨筋に急激な伸展を与え,ひずみ傷害実験モデルを作製した.打撲傷と同様に,病理学的および力学的評価を行い,以下の結果を得た.(4)傷害を受けた筋の組織観察を行った結果,大きく三つの重症度に分類可能であり,ひずみ量の増加に伴い,より重度の組織損傷が見られた.(5)25%以上のひずみ負荷により,筋収縮機能及び,破断までの吸収エネルギが減少する傾向見られた.(6)傷害を受けた筋の破断荷重及び,破断伸展比は無傷の筋の結果と変わらない傾向を示した. 今後,筋束,筋線維などのマイクロ構造要素の力学特性評価システムを開発し,筋組織のマイクロ損傷特性を検討し,損傷解析モデルの開発を進める.
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