研究概要 |
本研究では骨格筋のマイクロ構造の力学特性と受傷時のマイクロ構造・組織の特性を実験的に解明し,骨格筋損傷を評価,予測可能な筋損傷解析モデルの定式化を目指す. 平成17年度は,前年までに開発した生体組織マイクロ力学試験システムにより,骨格筋マイクロ構造要素である筋束の力学特性を実験的に検討した.筋束力学特性の引張速度依存性を評価するため,活性もしくは非活性状態の筋束試料を100,40,4%/secのひずみ速度で引張試験を行った結果,破断加重,破断伸展比,破断応力,応力-ひずみ曲線の線形部における接線係数には有意な差が認められなかった.活性依存性を評価するために,同速度条件の活性/非活性試料を比較した結果,40%/sec条件のみ破断荷重と接線係数に有意な差が認められたが,100,4%/secでは破断荷重,伸展比,応力や接線係数に有意な差が認められなかった.損傷による収縮能低下の引張速度,活性状態非依存性は骨格筋ひずみ傷害実験結果と同様の傾向であった.したがって筋束の損傷特性がひずみ傷害による収縮能低下の発生メカニズムに強く影響していると考えられる. また,筋のマイクロ構造とその損傷を考慮した構成式モデルの高精度化のために,筋組織が有する粘弾性特性の表現や微細構造の力学特性をそのまま巨視的な特性に反映できる均質化法の導入の検討を行った.その結果,本研究で定式化した構成式に非平衡状態応力項を加えることで粘弾性特性の表現が可能になると考えられ,さらにモデルを3次元有限要素解析に組み込む際に均質化法を適用することで微細構造の特性をより考慮したモデルへ発展できると考えられる.
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