研究概要 |
培養血管平滑筋細胞(CSMC),血管から単離直後の平滑筋細胞(FSMC),培養線維芽細胞(CFB)などを対象とし,細胞用引張試験機や原子間力顕微鏡(AFM)などを用い,細胞骨格を破壊した細胞の準静的力学特性ならびに応力緩和特性を計測した.また,引張試験では,培養細胞の基板上の接着形状を保ったまま力学特性を計測する方法も確立した.更に細胞内3次元構造を詳細に観察するために細胞把持回転観察装置を試作し,CTの原理を応用した3次元再構築アルゴリズムを適用することで,細胞内のAFの走行状態を3次元再構築する方法を確立した.こうして以下の結果が得られた: 1)AFMで得られたCSMCの局所スティフネスはMT破壊により上昇する傾向があった.また,引張試験で得られたCFBのスティフネスは,AFの破壊で約75%低下したが,MT破壊の影響は受けず,CFBの引張特性にはAFが主に寄与しているらしいことが判った. 2)基板付着形状を維持したCSMCの引張試験から,AFとMTの破壊によりスティフネスが夫々約70%,30%低下することが判り,AFだけでなくMTも引張特性に寄与することが判った.また,MTの破壊は細胞高さの減少,基板から剥離した際の細胞収縮量の増加を生じた.これらよりMTは圧縮力に対する抵抗要素としても働いていることが判った. 3)FSMC内部のAFが細胞の長軸方向に螺旋状に配向している様子が観察された.またCSMCの細胞核は,細胞が基板にある時は円盤状であるが,基板からの剥離により,大きく変形し凹みを生じることが判った.これは細胞収縮に伴う核の座屈と考えられた.
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