研究概要 |
細胞の3次元的観察,生体組織の凍結,血管壁の衝撃応答に関して,以下の研究成果を得た. まず,ブタ大動脈の内腔面を擦過して採取・培養した血管内皮細胞をシリコンゴム膜表面に播種して実験試料を用意し,これに準静的伸展あるいは一定振幅の繰返し変形を負荷できる装置を作製して,共焦点レーザ顕微鏡下で測定した細胞の3次元像を基礎データとした.また,種々の細胞形状での有限要素解析を実施して,細胞内部のひずみ分布は伸展方向に関する細胞寸法と細胞の高さに依存し,伸展方向に垂直な方向の細胞寸法には依存しないことを示した. 次に,生体組織の凍結保存や凍結破壊に関連して,生体組織の組織学的ミクロ構造と固体力学的特性,および,両特性の相関性に対する凍結パラメータ(冷却速度,加温速度,最低到達温度,添加剤の種類と濃度,凍結・融解のサイクル数など)の影響の体系的な解明を目指す.組織として,複数の種類の細胞と繊維質マトリクス,結合組織による層構造をもつ動脈血管を用いる.本研究遂行の第一段階として,筋繊維(筋細胞)の集合体である筋組織を用い,凍結・融解(最低到達温度-50℃)後の組織のホルマリン固定・包埋処理後の切片試料に対して,組織学的ミクロ構造の変化を調べ,冷却速度・加温速度の組み合わせ(急速と緩速の計4通り)の影響を明らかにした. また,血管壁の衝撃波治療時でのミクロレベルでの損傷観察のため,衝撃波発生となる装置である光ファィバおよび圧電素子の改良を行い,培養細胞に作用させる衝撃波の波形制御に関する実験を行った.その結果,圧電素子に関しては任意関数発生器による電圧発生波形の制御による衝撃波生成のための周波数や強度に関する条件を得たが,光ファイバに関してはファイバと水との界面での光学的および熱的な影響が大きく,衝撃波の出力が小さいためさらなる検討が必要となった.
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