研究概要 |
増殖と分化に富む小型肝細胞を肝臓から分離して培養した所、コロニー形成して毛細胆管が形成され、その毛細胆管が一定な周期で収縮し胆汁流動が生じている事が明らかになった。このような胆管の収縮は、小型肝細胞同士のコミュニケーションの結果、肝細胞の収縮がコロニー全体で同期している事実が見出された。本研究では、培養小型肝細胞のコロニーによって発生された毛細胆管構造の微小運動による収縮を生み出す肝細胞収縮の同期機構に関して、マイクロナノバイオメカニクスの観点から明らかにする事を目的とする。収縮に司るアクチンのダイナミカルな動作状態、細胞間コミュニケーションを司るギャップジャンクションやジャンクションに出現する蛋白の検出から、細胞間相互作用と構造形成との関係を明らかにする。 小型肝細胞は,培養後2週間ほど経つと非実質細胞に囲まれたコロニーを形成し,一部の細胞は成熟化し形態的に盛り上がってくる.盛り上がった肝細胞間には白い筋状の構造が形成され,培養後3〜4週間ほどで複雑に繋がったネットワーク構造を形成する. そこで、この白い筋状に見える毛細胆管様構造が生体内と同様の極性を保持しているか否か検討した.また,位相差顕微鏡でのタイムラプス撮影により毛細胆管の収縮運動について解析し,再生された毛細胆管に対するEndothelin-1とA23187の収縮運動への影響について検討した. 小型肝細胞によって生体外に再生された毛細胆管は,生体内の毛細胆管と同様のタンパク質の局在を示し,タイムラプス画像により収縮と拡張を繰り返していることが確認され,胆汁を排泄する能力を持っていることが分かった.また,この毛細胆管の収縮は,A231187,Endotelin-1によって収縮が促進されることから[Ca^<2+>]_iの上昇を引き金とした毛細胆管周囲のアクチン-ミオシン系の収縮運動であることが示唆された。
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