研究課題/領域番号 |
15087201
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
武田 定 北海道大学, 大学院・理学研究科, 教授 (00155011)
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研究分担者 |
丸田 悟朗 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助手 (00333592)
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キーワード | スピン集積体 / 磁気的相互作用 / 磁性金属酵素モデル / シアノ磁性体 / 超微細結合定数 / 電子スピン密度 / スピンゆらぎ / 原子価互変異性 |
研究概要 |
1.π共役系複素環分子を介した歪んだ配位構造を持つ磁性金属イオン間の磁気的相互作用:π共役系複素環分子は磁性金属イオン間の磁気的相互作用をになう配位子として分子スピン系において注目されると同時に、歪んだ配位構造を持つ錯体の研究を行うことにより、歪んだ配位構造を持つ金属酵素の得意な電子状態研究の基礎ともなる。今回はこの例として、ピラゾール配位子(pz)で架橋された[Cu(pz)_2]_n(1)とCu_2(NO_3)(pz)_2(phen)_2]NO_3(2)に注目し、pz配位子の固体高分解能^2H-および^<13>C-NMRスペクトルによりCu^<2+>からpz配位子上に誘起された超微細結合定数(電子スピン密度分布)を決定した。この結果と量子化学計算による分子軌道の解析から、Cu^<2+>イオンどおしの磁気的相互作用を支配するのはπ軌道ではなくσ軌道由来であることを見出した。(1)と(2)では歪んだ配位構造が大きく異なるにも関わらず、磁性金属イオンがCu^<2+>の場合には磁気的相互作用にはσ軌道が重要であることを見出した。今後より金属酵素と近い構造を持つ錯体へと研究を展開していく。 2.シアノ錯体の磁気的局所構造と磁性制御:Mo(CN)_8を構成要素とした三次元Cu^<2+>錯体は光照射により低温で強磁性体になることが知られている。これはMO^<4+>からCu^<2+>に電子が移動するためだが、錯体の構造とこの現象との関係は不明である。常磁性相における^<13>C-NMRスペクトルによりCu^<2+>周りのCNの配位構造が異なる2種類のCu^<2+>イオンがあることが示唆された。構造が解っている類似物質についての同様の研究から、この2種類は平面4配位型と三方両錐型に歪んだものであると考えられ、この歪んだCu^<2+>イオンが優先的に還元されることが光誘起強磁性の原因と思われる。また、Mo(V)(CN)_8とMn^<2+>CNイオンで結ばれた一次元数珠型の錯体は低温でフェリ磁性体となる^<13>C-NMRスペクトルによりMo^<5+>とMn^<2+がそれぞれCNイオンの炭素原子に誘起する超微細結合定数を別々に決定することに成功し、Mo(V)(CN)_8の特異性と磁気的相互作用についての基礎的知見を得た。 3.Mn/カテコール/セミキノン系のスピン・電荷ゆらぎと原子価互変異性:固体高分解能NMRにより、この系の配位子上のスピン変化とMn^<4+>とMn^<3+>のスピン変化を微視的視点から見分け、またカテコール/セミキノン間の速い状態交換を見出した。今後長距離のスピン伝達系へと発展させたい。
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