研究概要 |
1.反強磁性体ナノ粒子の表面スピン:反強磁性体NH_4MnF_3ナノ粒子の表面スピンの状態をND4^+イオンの固体重水素核および窒素核NMRスペクトルにより見分けることに成功した。30nmの粒子では粒子内部の反強磁性秩序はバルク結晶とほぼ変わらないが表面スピンには磁気秩序はほとんどなく、さらにポリマー(PVP)で被覆し10nmまで小さくすると内部の磁気秩序もほとんど失われることが解った。また、表面スピンには0.1〜1000Hzでの緩和現象があり、これは粒子サイズおよび表面被覆の有無で大きく変化することを明らかにし、粒子のコアと表面、粒子と粒子の相互作用など磁性ナノ粒子のスピン構造解明の道を開いた。 2.金ナノ粒子超格子結晶のメカニズム:領域内共同研究(木村)として、メルカプトコハク酸で被覆された金ナノ粒子の表面有機分子と水分子の結合状態を、固体高分解能^<13>C-NMR、重水素核NMR、TG-DTA-質量分析同時測定などにより研究した結果、有機分子および水分子の一部は硬く金表面に結合し、室温でもほとんど運動がなく、これが金ナノ粒子の外形を保つため、ナノ粒子が超格子結晶をつくると考えられる。 3.スピン・電荷ゆらぎ相関系:温度変化により有機配位子間および有機配位子・金属イオン間で電子移動を起こし且つそれぞれのスピン状態が変化する一連の「セミキノン・カテコラトCoやMn系」における、結晶中でのスピン変換ダイナミクスの詳細を固体高分解能NMRや誘電率測定により初めて微視的に解明した。 4.その他にも、酵素活性中心に類似した磁性金属錯体などのd-電子スピン(酸化還元活性軌道)の有機配位子への空間的広がりを、固体高分解能^1H,^2H,^<13>C,^<15>N-NMRなどにより詳細に決定した。また、様々なシアノ磁性体の磁気的局所構造、強磁性と誘電性の共存、プロトン伝導などを固体NMRなどで解明した。
|