研究課題
特定領域研究
スイッチングユニットをオリゴマーの中央に配置し、外側にスイッチ部分をつなげる設計をとった新しいON-OFF逆転系の分子について検討を行った。これらの分子では、開環体では共役がつながっているためにラジカル間の磁気的相互作用の強いON状態を取っているが、閉環することにより共役がsp3炭素により切れ、相互作用の弱いOFF状態を取ることが期待される。フォトクロミック反応に伴うESRスペクトル変化を測定したところ、開環体では2つのイミノニトロキシド間に超微細構造定数より大きい交換相互作用が観測されたのに対して、閉環体ではsp3炭素によってπ共役が切断されているために、交換相互作用は観測されずに、孤立した2つのイミノニトロキシドのESRスペクトルを示した。線形のシミュレーションから見積もったスイッング効率は150倍以上であった。次に、ジアリールエテンと金微粒子からなるネットワークにおける光反応性および電気伝導性の光スイッチングについて検討した。両方にチオール基が付いた分子で金微粒子ネットワークを形成させ、櫛型電極の上において電導性の光スイッチングを試みた。その結果、電導性は紫外光の照射とともに増加し、可視光の照射で減少した。可視光での電導性の現象は非常に遅いという問題があることも分かった。この際のスイッチングは5倍程度であった。可視光での開環反応の効率を上げるために、開環反応量子収率が以前のものと比べて20倍大きい分子を選び、同様の実験を行った。その結果、完全に可逆なスイッチング挙動が確認された。また25倍のスイッチングが確認された。これは、磁性交換相互作用のスイッチングに中心的な役割を果たしたπ共役系の組み換えが電気伝導にも有効に働いていることを示しており、情報伝達のスイッチングとして一般性を有していることを意味する。
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