研究課題/領域番号 |
15087208
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
手木 芳男 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (00180068)
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研究分担者 |
三浦 洋三 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 教授 (50047312)
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キーワード | 分子磁性 / 光励起状態 / スピン整列 / 時間分解ESR / 電子移動 / エネルギー移動 / π共役系 / パルスESR |
研究概要 |
2004年度に立ち上げたパルスレーザーと同期させたパルスESR測定装置により、以下の研究成果が得られた。(1)時間分解ESRでは、4つの不対電子からなる特異な励起三重項とそれに近接した五重項状態の存在する特異なスピン系に対して、位相緩和時間の違いを利用してスペクトル分離を行う事に成功し、またそのスピン多重度も、transient nutationの周期を解析する事により直接決定できた。この成果により、励起三重項スピンカップラーを用いた光誘起スピン整列の残された問題の一つが解決された(Chem.Eur.J.)。(2)分子内集積系の一つとして光励起四重項高スピン状態が観測された分子に機能性部位(エネルギー受容体)を導入した新規安定ラジカル系を合成し、その光励起状態のスピン整列をスピンダイナミックスを時間分解ESRとパルスESRで研究した。この系では、アントラセン部位から受容体への光誘起電子移動により形成された電荷分離状態を経由したと考えられる特異な分極パターンが観測された。この研究成果はイオン対状態を介して形成された光励起高スピン状態の最初の観測例であると考えられる(投稿中)。(3)光励起四重項高スピン状態をとる安定ラジカルを電子ドナーとしフッ素化ベンゾキノンを電子アクセプターとする分子間CT系の1つにおいて、興味深いサーモクロミズム現象が観測されたが、詳細は現在検討中である(投稿準備中)。この系以外にも種々の組み合わせを検討し、CT結晶として単離できたものに関しては磁化率測定等によりその基底状態の物性を明らかにした(一部Polyhedronに掲載済み)。(4)パルスESR測定によりπ共役有機スピン系の光励起高スピン状態の緩和時間とスピンダイナミックスが明らかになりつつある(投稿準備中)。
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