研究概要 |
本特定領域で立ち上げたパルスレーザーと同期させたパルスESR測定装置により、π共役有機刻ピン系の光励起高スピン状態の緩和時間とスピンダイナミックスが明らかになりつつあります。 (1)昨年度に続き光励起四重項高スピン状態をとる安定ラジカルに機能性部位を導入した系を、光誘起電子移動やエネルギー移動によるスピン間相互作用と動的スピン整列を解明する準めのモデル系として合成し、励起状態でのスピン間相互作用を研究しました(Angew.Chem.Int.Ed.,45,4666(2006).)。昨年行ったBODIPYを導入した系と比較するためアントラキノンを導入した系を新たに合成し、その光励起状態を研究したところ、光誘起電子移動は起こらず、系間交差機構のみによるスペクトルパターンを得る事ができ、先のBODIPY導入系での特異な動的分極パターンが、光誘起電子移動と、逆電子移動により形成されるパターンである事を裏付ける新たな実験結果を得る事ができた(投稿準備中)。また、新たに分子内電荷移動相互作用系として光励起四重項高スピシπラジカルに、TCNQ誘導体を機能性部位として導入した系の合成も行ったが、現在最終段階の精製を試みている。(代表者、分担者) (2)スピン・クロスオーバー現象を示す有機磁性系の実現には、基底状態において高スピン状態が準安定状態として存在するように、高スピン状態と低スピン状態との間に双安定性を持たせる必要があります。この観点から、昨年度に続き光励起高スピン状態をとる有機スピン系を配位子として用いた有機一無機複合系の形成を試み、配位子の光励起高スピン状態を経由する界ピン転移の可能性を検討しました(Polyhedron, in press.)。(代表者)
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