研究概要 |
磁性金属薄膜・ワイヤ・クラスターはそれ自身の物性に大変興味がもたれているが、本研究ではこれらの金属表面に原子分子を吸着させるなどしてその磁性体の磁気的性質を劇的に変化・制御することを目的としている。まず、昨年度本体を購入した超高真空極低温走査トンネル顕微鏡(ユニソク製USM-1200型)のコントローラとしてRHK製USM-1200対応を新たに購入し、感度の飛躍的向上を求めた。本年度は本装置は立上げ・性能評価を終了した。来年度から観測を行う予定である。 一方、現有の超高真空仕様磁気光学Kerr効果(MOKE)測定装置とX線磁気円二色性(XMCD)測定装置を用いて、試料作成・磁気物性測定評価を行った。特に注目したのは、Fe/Cu(001),Fe/Ag(001)薄膜へのK吸着である。Fe/Cu(001)におけるFeは約4原子層以下で面心正方格子をとり強磁性である。昨年度これにKを吸着させると磁化が増大することがMOKEにより観測できたと報告したが、この段階ではK吸着による状態密度の変化によりMOKE強度が増大したとも考えられるため、本年度、UVSORでXMCD測定を行った。その結果、確かにこの増大はFe原子の磁気モーメント自体が増加していることによると結論できた。 それ以外に試料作成・物性測定を行った系としては、Co/Cu(1 1 17)におけるAg,NO吸着、Cu/Ni/Cu(001)とCu/Ni/O/Cu(001)系の磁気特性に関する酸素の影響、さらに同系の炭素の効果などである。酸素の影響に関しては論文に投稿し現在印刷中である。
|