研究分担者 |
小柳 義夫 東京大学, 大学院・情報理工学系研究科, 教授 (60011673)
山本 博資 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (30136212)
室田 一雄 東京大学, 大学院・情報理工学系研究科, 教授 (50134466)
今井 浩 東京大学, 大学院・情報理工学系研究科, 教授 (80183010)
村重 淳 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 助教授 (40302749)
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研究概要 |
本研究の目的は,従来から開発されつつある分野ごとの個別のロバスト計算技術を横断的に整理し,分野の境界を超える共通で普遍的なロバスト計算原理を抽出することによってロバスト計算のためのアルゴリズム設計パラダイムを構築することである.この目的のために,超ロバスト計算原理の初期仮説として「計算対象が持つべき何らかの構造の保持を,計算の過程で積極的に保証する機構を組み込むことによってロバストな計算アルゴリズムを作ることができる」という命題を設定し,研究参加者それぞれが開発しつつある個別のロバスト計算技術にこの仮説が当てはまるか否かを検討した.計算幾何の分野では,計算対象の背景にあるトポロジー構造の一貫性の保持が計算のロバスト化に役立つことを以前から指摘してきたが,本年度は新たに,対象のディジタル近似から得られるディジタルトポロジーを利用する方法を開発した.数値計算の分野では,微分の階数を非整数とした場合の微分計算に,グラフ構造と数値計算を紐合せた高速自動微分の方法を適用することに成功した.制御の分野では,対象の物理量の変動にロバストな安定性を保証する問題を,半正定値計画として定式化して解く方法を開発した.代数計算の分野では,行列成分の具体的数値を知らなくても正か負か零かの情報のみから階数,正定値性などについて論じる枠組みを作ることができた.量子情報の分野では,量子情報空間の非ユークリッド距離の幾何構造に着目して,通信容量を計算する方法を開発した.符号計算の分野では,同期系列を利用することによって伝送誤りの影響を局所的な範囲だけに閉じ込めることに成功した.小さなデータからの統計的推定の分野では,対象をマルコフ過程として定式化し,有限の手続きでその定常状態の完全なサンプルを得るアルゴリズムを構成した.このように,上の仮説が多くの分野でロバストアルゴリズムを設計する基本指針となることを確認する実例を増やすことができた.
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