IP_3レセプターは細胞内の小胞体にあるCa^<2+>チャンネルである。これまでIP_3レセプターの局在する小胞体は網状になっていると考えられていたが、従来の網状小胞体の他に、高速で微小管上をモータータンパク質を利用して走行する粒子状の小胞体があることをはじめて発見した(J Cell Science 2004)。これは教科書に書いてない新しい概念であり、脳の可塑性(記憶・学習など)を考えるための重要なデータである。またIP_3レセプターを細胞膜へトランスロケートするのに必要な4.1Nを発見した(J.Biol.Chem.2003)。4.1NはIP_3レセプターのC末端に結合する分子として、我々が同定した。4.1NがIP_3レセプターの側方拡散にも関わることも発見している(J.Biol.Chem.2004)。しかも4.1NはAMPAレセプターやGluRIと結合し、かつシナプス後部のPSD(post synaptic density)に局在することから、シナプスの可塑性との関係が示唆される。我々はIP_3結合部位のうち、IP_3結合コアーの三次元X線結晶構造を既に報告した(Nature2002)が、さらにN末端側の調節領域の三次元X線結晶構造解析の解明にも成功した(Molecular Cell 2005)。この部位はチャンネル開閉の重要な部位であった。IP_3レセプターの極低温電子顕微鏡観察による単粒子解析で三次元構造を決定した(J.Mol.Biol.2004)ところ、表面は多くの孔があり内腔は広く、多くのIP_3レセプターの機能を調節する分子と結合しうる構造をしていた。また小胞体内腔にレドックスセンサーであるERp44を発見し、この分子はIP_3レセプターに直接結合してCa^<2+>放出を調節した(Cell 2005)。これはレドックス制御とCa2+制御が直接連携している最初の証明となった。
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