IP_3レセプターは小胞体に局在し、細胞外からの刺激により産生されたIP_3により開くカルシウムチャネルである。IP_3レセプターに結合する分子を探索したところ、IP_3結合部位に結合する新規の分子としてアービッ(IRBIT)を発見した。アービットの役割はIP_3レセプター結合部位にIP_3と競合的に結合することによりIP_3誘導カルシウム放出を調節することを明らかにした(Molecular Cell 2006)。しかもRNAiの手法でアービットの産出を破壊すると、カルシウム振動の頻度とカルシウムのピークの高さが増強し、かつアービットを過剰発現させると減弱した(Molecular Cell 2006)。次にアービットの標的を探索したところ、ナトリウム・重炭酸イオン・共輸送体1(NBC1)をつきとめた。NBC1には腎臓タイプと膵臓タイプがオールタネティブスプライシングにより産出される。アービットは膵臓タイプNBC1に結合し、その活性を上昇させることを明らかにした。この事実はカルシウム放出系と酸・塩基平衡系とがリンクしていることが証明された(PNAS 2006)。特にNBC1は膵臓に多く発現するが、体全体の全ての細胞で発現しているので、低発育や低身長などをおこすことが知られており、膵臓タイプのNBC1の調節をアービットがすることは生体機能を考える上で大変重要と考える。またIP_3レセプタータイプI型(IP_3R1)欠損マウスの解析をして小脳顆粒細胞に存在しているIP_3R1がプルキンエ細胞の樹状突起形成に関わることを証明した(J.Neurosci.2006)。更に蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)の手法によりIP_3指示薬を開発した(J.Cell Biol.2006)。
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