研究課題
生体内で生きたまま分子の機能を解析するための強力な手段として蛍光蛋白質を用いたFRET(蛍光共鳴エネルギー移動)を利用する方法が注目されている。FRETを利用することで優れた時間・空間的分解能により目的分子の動態を解析することが出来る。我々はFRETのドナーにECFPを、アクセプターにVenusを用い、両蛍光たんぱく質にカスパーゼ切断至適配列DEVDを挿入した新規カスパーゼ3 indicator 「SCAT3」を開発し、このペアを採用することで、初めて生きた細胞内で安定的にカスパーゼ活性化の解析を可能にした。さらにUAS-Gal4システムにてSCAT3を発現するトランスジェニックショウジョウバエを作製した。我々はスピニングデイスクを用いたマルチポイントスキャン型を採用することにより、24時間以上生体内において退色することなく蛍光イメージングを行うシステムを構築した。Scabrous-Gal4を用いて剛毛前駆細胞でSCAT3を発現させたところ、翅成虫原基でのScabrous陽性細胞クラスターで弱いながらカスパーゼの活性化が検出された。このようなカスパーゼの活性化は予想外でありカスパーゼの活性化シグナルが発生の細胞死以外の局面でも機能しうることを示唆している。翅成虫原基における死細胞をTUNEL法で観察するとScabrous陽性細胞クラスターには殆どシグナルが観察されず、Scabrous陽性細胞クラスター内でのカスパーゼ活性化は細胞死以外の機能を持つことが予想された。この観察は、カスパーゼ活性化シグナルが細胞死誘導のみならず細胞運命決定にも関与することを示唆するものであり重要である。カスパーゼによる細胞運命決定に関与する分子を同定する目的で染色体欠失系統を用いた遺伝学的なスクリーニングを行い、カスパーゼの調節因子および基質候補分子を見出した。
すべて 2004
すべて 雑誌論文 (6件)
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