1.高速AFMの改良 (a)高速スキャナーの開発:昨年度開発したZスキャナーのアクティブダイピング法を更に改良した。アクティブダンピングにより、150kHzの共振を完全た消去できるが、位相の遅れが大きくなる。この位相の遅れを逆伝達関数法により補償した。昨年度の成果と合わせ論文にまとめた。Zスキャナーの帯域を更に上げるために、Zピエゾの共振周波数を更に上げるための検討を行った。数種類のピエゾを特注製作したところ、片端固定で340kHzの共振をもつもの(最大変位900nm)が得られた。Xスキャナーについては、スキャナーのデザインを変更し、共振周波数を20kHzから50kHzに上げることができた。 (b)トランスジェント法の導入:波長355nm、繰り返し周波数100kHz、50mWのパルスレーザを探針直下の試料領域に照射するための改良を行った。最適な反射条件を見出し、照射によりCaged-ATPからATPを瞬時に放出する前後で起こるATPase系の動態を観察できるようになった。 (c)新しい励振法の開発:カンチレバーの直接力を作用できる新しい励振法を検討した。波長405nmの強度をサイン波変調させカンチレバーに当てたところ、熱膨張によりカンチレバーが振動することを見出した。応答周波数は156kHzあり、低周波では最大変位100nmの変位が得られ、カンチレバーの共振周波数では最大20nmの変位が得られた。実用できることが判明した。また、カンチレバー自身をZスキャナーとして用いるられる可能性が出てきた。 2.イメージング トランジェント法が導入できたので、それをGroEL-GroES系、ミオシンV-アクチン系に適用した。前者では、ATP放出の直後にGroESがGroELに結合してゆく様子を観察できた。後者では、ATP放出直後にアクチンフィラメントが一方向に運動する様子や、ミオシンV分子が1ステップだけアクチンに沿って素早く移動する様子が観察できた。
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