我々が世界に先駆けて開発した高速AFMの性能を飛躍的に向上させて、主に生物分子モータのナノ機能動態を捉え、機能メカニズム解明に迫るデータを得て、この新しい顕微鏡の有効性を実証することを目的に、研究を進めてきた。 前年度までで、高速AFM装置開発はほぼ完了したが、高速スキャナーの開発と探針・接触力の検出方法の検討は継続して行った。全体としては、開発した装置を用いて生物試料の観察と解析に注力した。その結果、当初の大きな目標であったミオシンV分子がアクチンフィラメント上を歩行運動する様子を捉えることに成功し、且つ、いくつかの化学状態での振舞いを観察することで、ATPase反応の進行とともに起こるその歩行運動のメカニズムをほぼ解明することができた。マイカ基板の影響は未だあるものの、真の分子の振る舞いを捉えたと言える。タンパク質分子とほとんど相互作用しない基板として脂質膜上に形成させたストレプトアビジンの2次元結晶を用いた場合には、運動途中のブラウン運動は非常に速く、高速AFMでも捉えることができなかった。その他には、双頭ダイニン分子が微小管上を運動する様子、上記2次元結晶中の格子欠陥の異方性ブラウン運動などをイメージングすることに成功した。 こうして、世界最高性能の高速AFMの開発に成功し、機能している分子の振る舞いを手に取るように見ることが可能になった。
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