研究概要 |
天然物の中でも最も構造多様性に富むトリテルペノイドおよびポリケタイドの生合成に関わる酵素群につき,新規酵素遺伝子のクローニングと精密な構造及び機能解析を基盤とした分子多様性の創出を試み,以下の成果を挙げた。 1.シロイヌナズナよりセコトリテルペン骨格を直接生成するOSCをクローニングし,閉環反応機構を明らかにした。 2.シダ植物より,スクワレン閉環酵素およびオキシドスクワレン閉環酵素を各1種クローニングし,既知関連酵素との系統樹解析により,高等植物のオキシドスクワレン閉環酵素の分子進化解明に重要な手がかりを得た。 3.サポニン生合成における糖転移酵素遺伝子2種をダイズよりクローニングし,基質特異性などの諸特性を初めて明らかにした。 4.全ゲノム配列解析がなされた糸状菌Aspergillus oryzaeのゲノム中に存在する繰返し型Type-IPKS遺伝子4種につき,異種糸状菌における機能発現を行ない,PKS産物を同定した。このうちの1種はビフェニルラクトンを生成する新機能PKSであった。 5.同様に,全ゲノム配列解析がなされた糸状菌Asp.fumigatusにおけるヘルボール酸生合成遺伝子クラスターの同定に成功し,OSCおよび2種の酸化酵素の機能を同定した。さらに,Asp.terreusからは,新機能PKSおよびプレニルトランスフェラーゼをクローニング,機能解析し,これらを含むテごトニン生合成遺伝子クラスターを同定した。 6。酵母をホズトとしてAsp.fumigatusのポリケタイド色素生合成遺伝子クラスターの再構成を試み,新規生合成中間体を同定し,生合成経路の解明に重要な知見を得た。 7。糸状菌由来6-メチルサリチル酸合成酵素の酵母および大腸菌における発現に成功し,活性部位変異体などの共発現により,従来提唱されていた二量体モデルを覆し,新たな四量体高次構造モデルを提出した。
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