研究課題/領域番号 |
15102002
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研究機関 | 鹿児島国際大学 |
研究代表者 |
上村 俊雄 鹿児島国際大学, 国際文化学部, 教授 (40136833)
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研究分担者 |
中園 聡 鹿児島国際大学, 国際文化学部, 教授 (90243865)
大西 智和 鹿児島国際大学, 国際文化学部, 教授 (70244217)
松本 直子 岡山大学, 大学院文化科学研究科, 助教授 (30314660)
三辻 利一 大阪大谷大学, 文学部, 非常勤講師 (40031546)
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キーワード | 考古学 / 文化人類学 / 文化財科学 / 蛍光X線分析 / 遠隔地交渉 |
研究概要 |
本研究は、学際的・科学的方法に特徴づけられる幅広い考古学研究によって、社会の発展を説明するための新視点--遠隔地交渉--を提示し、遠隔地交渉の役割に関する高次の人類史的理論の構築に寄与することを目的とする。 本年度の大きな仕事は、アジア・オセアニア地域における現地調査を実施し、それを踏まえた検討を行うことであった。オセアニア地域については、フィジーにおいて民族考古学的現地調査を実施し、収集した資料・データをもとに認知考古学的視点から検討を行うとともに、土器試料の蛍光X線分析も実施した。その結果、経済学的諸現象や伝播現象・情報の交換などを包摂しつつ体系的に説明するために、交渉が日常的接触範囲を超える場合を遠隔地交渉の範囲と定義づけした。その上で、遠隔地交渉の諸要素・バリエーションを検討し、類型化に成功した。さらに、遠隔地交渉のパターンが「故郷表示型」「ディアスポラ型」「異界交渉型」「国家的外交」などに大別でき、それを踏まえれば従来とは異なる歴史叙述が可能になることも明らかにした。加えて、遠隔地交渉がなぜ人類にとって重要かという本質の検討を進め、ホモ・サピエンスの認知基盤・認知進化と大きな関わりがあることも示唆された。このように、来年度の完成へ向けて重要な理論的基盤が構築されつつある。 さらに、東アジア地域の調査として日本列島とその周辺、特に台湾における現地調査も実施し、近接地域間で交渉が見られない地域間の研究も行った。この現象も重要な追求課題として位置づけなければなるまい。 そのほか、蛍光X線分析を用いた胎土分析のデータもさらに蓄積することができた。このように考古科学的証拠による遠隔地交渉の蓄積と解析を進めつつある。なお、普及・公開については、論文・学会発表のほか鹿児島国際大学で平成18年度研究成果講演会を実施し、上記の理論化を含む本プロジェクトの諸成果を一般公開した。
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