研究課題/領域番号 |
15104006
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
五神 真 東京大学, 大学院工学系研究科, 教授 (70161809)
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研究分担者 |
宮野 健次郎 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (90167677)
永長 直人 東京大学, 大学院工学系研究科, 教授 (60164406)
十倉 好紀 東京大学, 大学院工学系研究科, 教授 (30143382)
鹿野田 一司 東京大学, 大学院工学系研究科, 教授 (20194946)
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キーワード | 強相関電子系 / 遷移金属酸化物 / 非線形光学効果 / 電荷秩序 / 量子位相 / 量子スピンホール効果 / 時間分解磁気光学分光 / 磁場誘起強誘電分極フロップ |
研究概要 |
固体の多体電子間相互作用に注目し、磁性と光学応答の結合などによる、特異な機能の発現を引き出すことを目的として、物質設計、光機能の増強、外場による物質相の切り替えなどの観点から、新しいデバイスの原理を探る研究をメンバーの連携の下に進めている。 特異光機能探索:強磁性半導体GaMnAsにおいて我々が見出した、光照射による高効率のテラヘルツ放射現象について、光機能素子としての応用につなげるため光励起キャリアの内部磁化による加速という観点からメカニズム解明を進めた。また、人工キラルナノ構造について、テラヘルツ領域の偏光制御素子としての応用検討をすすめた。(五神) 光誘起相制御と強相関エレクトロニクス:CMR機構の理解を得るため、引き続き二重臨界点近傍のマンガン酸化物薄膜の金属・絶縁体共存状態について調べた。マイクロコンタクトプローブを用いて実空間分布の測定を行い、臨界点から遥かに離れた温度においても巨視的な総分離状態が準安定に存在し、その絶縁体領域ではヒステリシスを伴う電流誘起絶縁体・金属転移を見出した。また、磁化の変化に対応しない磁歪を磁場下軌道放射光回折実験で見出し、これが新種のCMRメカニズムであることを提案した。(宮野) 時空間における量子干渉制御理論:時間および空間依存性のある系での量子位相の振る舞いを理論的に明らかにした。1.量子スピンホール系における乱れの効果を調べ、局在の新しいユニバーサリティークラスに属すること見出した。2.スパイラル磁性体の電磁気マグノンの理論を構築し、テラヘルツ領域で共鳴的に増強する電気磁気結合を見出した。3.ナノスケール誘電体における分極の量子論を発展させ、空間的な乱れによる増強効果を見出した。(永長) 異方的秩序状態の制御:遷移金属酸化物における電荷・軌道・スピン秩序相の制御方法を探索してきた。例えばペロブスカイト型バナジウム酸化物における軌道・スピン整列状態を詳細に調べ、特に反射率、ラマン散乱等の光学的手法による観測を行うことで秩序状態の異方性に関する情報を得ることができた。また系にホールをドーピングすることによってその異方性が変化する様子も観測でき、物質設計による相制御手法が明らかになってきた。(十倉) 分子性物質における新機能開拓:これまでの研究から三角格子を持つ有機モット絶縁体・-(ET)_2Cu_2(CN)_3がスピン液体状態にあることが明らかになった。今回、この物質の電荷状態を電気伝導度と光学伝導度測定で調べたところ、同型の反強磁性モット絶縁体に比べて電荷ギャップが強く抑えられており、加圧による金属への1次転移直前にほぼギャップが消失することを示唆する結果を得た。これは、スピン自由度におけるフラストレーションが電荷自由度に無視できない効果を及ぼしていることを示している。(鹿野田)
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