研究概要 |
今年度は,実験対象とするモノアラガイ(Lymnaea stagnalis)の継代飼育系の確立,遺伝子解析用の実験環境の整備などの基本的なセットアップを行うとともに,以下の研究を行った.(1)初期発生段階における貝殻形成の解析:cDNAライブラリーを作成するため,胚の各段階でRNAの定量を行った.必要量のRNAが得られ次第,ライブラリー作成を行う予定である.軟体動物の貝殻形成への関与が示唆されているengrailed, BMP, Hoxの各遺伝子については,縮重プライマーを用いて,ゲノムDNAよりPCR法によって遺伝子断片の増幅を行った.engrailed以外については増幅産物が得られており,現在配列の解析を行っている.また,偏向顕微鏡による観察で,初期幼生の原腎官付近に結晶質の物質が一対沈着していることが発見された.現在構造解析を行うべくその単離を行っている.(2)成体における殻体の非対称性を制御する遺伝子の網羅的解析:殻体の非対称性(らせんに巻いていること)の原因として,殻を分泌する外套膜において左右非対称的に発現している遺伝子が関係していると予想した.また,貝殻そのものの分泌に関与する遺伝子(殻体基質たんぱく質など)も左右で発現量が異なると期待される.そこで,これら遺伝子の単離を行うため,HiCEP法を用いて,外套膜の左側と右側でそれぞれ発現しているmRNAの発現量を網羅的に解析した.その結果,現在までに右巻き個体の外套膜左側からおよそ7000種類のmRNAが検出された.外套膜右側からのRNAについては不純物の除去を行い,現在再解析を行っている.
|