研究課題
今年度は、軟体動物の貝殻形成に関与しているとされるengrailed遺伝子(転写調節因子)と、軟体動物腹足類のカサガイ(Patella vulgate)において貝殻形成への関与が示唆されているdpp遺伝子(成長因子)の相同遺伝子をモノアラガイLymnaea stagnalisにおいて単離し、その発現を解析することを主な目的として研究を行った。L.stagnalisのゲノムDNAを単離し、縮重プライマーセットを用いたPCRにより、engrailed、dpp両遺伝子の断片を得た。3'RACE法、5'RACE法を用い、L.stagnalisのengrailed、dpp両遺伝子の全長(それぞれLst-en、Lst-dpp)を得た。両遺伝子に対するDIG-ラベルRNA probeを合成し、発生過程において、in situ hybridizationを行った。その結果、Lst-enは、卵割期胚においていくつかの割球で、原腸陥入期胚では動物半球側のいくつかの細胞で発現がみられた。初期原腸胚においては貝殻腺ではなく、背側外胚葉で発現が見られたことから、L.stagnalisのengrailedは貝殻形成には関与していないことが示唆された。一方、Lst-dppは、初期原腸胚まで、ほとんど発現が見られなかったが、後期原腸胚において、貝殻腺の開口部を縁取るように発現していた。カサガイ同様、L.stagnalisのdppは貝殻形成に関与していることが考えられ、少なくとも、腹足類の貝殻形成におけるdppの役割の保存性が示唆された。
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