研究概要 |
(1)細胞内の主要な脂質セカンドメッセンジャーであるホスファチジルイノシトール-3,4,5-三リン酸(PIP_3)を,蛍光顕微鏡下の単一細胞で可視化分析するために新規蛍光プローブ分子(fllip:フリップ)を開発した.これにより,1)血小板由来成長因子(PDGF)などのペプチドホルモン刺激により,PIP_3が細胞膜のみならず小胞体膜やゴルジ体膜などendomembraneで大量に増加することを見いだした.また,II)このendomembraneでのPIP_3は,エンドサイトーシスにより細胞内に取り込まれたチロシンキナーゼ受容体に刺激されてendomembrane上で生合成されたものであることを明らかにした(Nature Cell Biol., 5,1016(2003)). (2)プロテインキナーゼAktの活性化に基づく蛋白質リン酸化を可視化検出する蛍光プローブ(Aktus;アクタス)を開発し,ペプチドホルモンのインスリンは内皮細胞のゴルジ体にAktを局在化・活性化させるが,女性ホルモンのエストロジェンはゴルジ体のみならずアポトーシス抑制に重要なオルガネラのミトコンドリアにもAktを局在化させ活性化することを見いだした(J.Biol.Chem.,247,30945(2003)) (3)生きた細胞内でのタンパク質間相互作用を検出する発光プローブを開発した.renilla luciferase (RLuc)のN末から91番目で切断し,各々にY941ペプチドとSH2nを連結した.両タンパク質を発現した細胞にインシュリンを添加すると,リン酸化Y941ペプチドとSH2nとが相互作用し,二分したRlucが近接して発光能を回復することを見出した.Y941のリン酸化を発光強度を指標に時空間解析できることを実証した(Anal.Chem.,75,4176(2003)). (4)生きたマウス個体内におけるタンパク質の核内移行検出プローブを開発した.二分したRlucにinteinを連結すると,スプライシング反応により二分したRlucが再連結して,効率よく再構成されることを見出した.この二分したRlucを用いて,ARのサイトゾルから核内への移行を検出するプローブを作製した.プローブを発現したCOS-7細胞に男性ホルモン(DHT)を添加した時,DHT濃度に依存してRLucの発光強度が増大することが分かった.このプローブをマウス脳内に移植して,マウス個体内のDHT検出法を開発した.procymidoneやPCBをマウスの腹腔に投与すると,脳内のARの働きが抑制されることを明らかにした(投稿中).
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