研究課題
昨年度製作した極低温型4探針STM装置(グリーン関数STM装置)の動作試験および調整を行い、いくつかの点について改良を行った。また、カーボンナノチューブを利用したSTM探針の製作を行い、その電気特性を測定した。以下に、詳細を述べる。(1)液体ヘリウムを用いて試料ステージの冷却試験を行い、到達温度7K、持続時間20時間以上を達成し、初期性能を確認した。(2)STMスキャナーが振動に弱く、原子分解能を得るのが極めて困難だったため、設計を変更して耐振動性の高い構造に改造した。これにより、室温では原子分解能が比較的容易に得られるようになった。(3)STM/STSモードと4探針電気伝導測定モードを切り替えられるヘッドアンプを設計製作し、その動作試験を行い、初期性能を確認した。(4)カーボンナノチューブ(CNT)探針の製作を行った。走査電子顕微鏡中で、タングステン探針の先端にCNT探針を接合し、さらに、パルスレーザー蒸着法でその探針にタングステンおよび白金イリジウム薄膜をコートした。その探針を用いてSTM像が取れることを確認した。また、CNTとタングステン探針の接合部の電気抵抗を4探針STM装置によって測定し、数百Ω程度まで低減できることを見出した。(5)2本のタングステンCNT探針を4探針STM装置に装着し、SEM観察しながらお互いに近づけたところ、約50nmまで接触させることなく近づけられた。この探針間距離は、世界最小の新記録である。
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