研究課題
(1)PtIr被覆CNT探針を用いた4探針STM装置で、コバルトシリサイド・ナノワイヤの電気抵抗を最小探針間隔30nmまで測定した。その結果、この距離においても室温では1次元的な拡散的伝導であることがわかり、そのことから基板に電流が全くリークしないこともわかった。(2)Si(111)-4×1-In表面に酸素を暴露して制御された量の点欠陥を導入し、4探針STMによる正方4探針法を用いて、インジウム原子鎖に沿う方向の伝導度(σ_<//>)とそれに直角方向の伝導度(σ_⊥)を測定した。その結果、酸素吸着量の増加にともなって、σ_<//>のみが著しく減少するが、σ_⊥はほとんど変化しないことがわかった。これから、伝導がインジウム原子鎖に沿った方向にのみ主に起こっていること、鎖間相互作用が非常に小さいことが明らかになった。(3)Si(111)-4×1-In表面のσ_<//>およびσ_⊥の温度依存牲を温度可変4探針STMで測定した。その結果、両者の温度依存性が全く異なり、σ_<//>はパイエルス転移に伴う劇的な変化、σ_⊥はバルクSiの伝導度と同じ温度変化を示した。このことから、σ_<//>はインジウム原子鎖を流れる伝導で、σ_⊥は基板を流れる伝導であることが明らかとなった。(4)一方の探針のバイアス電圧に交流電圧を重畳させ、そのとき他方のトンネル電流の交流成分を測定することによってトランスコンダクタンスを測定した。2探針がキャリアのコヒーレント領域に入っていれば、これはグリーン関数の情報であるが、今回の測定では、変位電流成分や非コヒーレント成分が支配的であった。グリーン関数測定のための最適条件を模索した。
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