研究概要 |
本研究では,マイクロ・セルプロセッシングに適用するための熱流体新機能プロセスの発現という目標に向けて,再生医工学における幹細胞等の細胞ソースを検知・選別・分取するためのセルソーティングシステムの開発・評価を進めている. まず,末梢血より特定の抗原をもつ細胞群を分離することを想定し,抗体を混合した感温性ゲルを塗布した細胞捕捉基板と,循環旋回流を生成するコーンプレートとから成るシステムを構築した.コーンの回転速度を制御することにより,細胞にダメージを与えることなく目的細胞のみを分離・回収することに成功し,抗体基板の再利用が可能であることを示した. また,末梢血を遠心分離した白血球分画など,比較的少量の細胞を含む試料より幹細胞を分離するため,免疫磁気細胞分離法を単一チップ上で実現するマイクロ磁気分離システムの開発に係わる要素技術の確立を進めた.抗体を塗布した磁性粒子により細胞を標識するラミネーション・マイクロ混合器内における標識性能を定量的に評価し,オンチップ電磁石を用いたマイクロ磁気分離器のMEMS技術による製作法を確立した.上記の成果を踏まえ,両流路要素を統合したシステム設計への指針が得られた. さらに,標識粒子を必要としないセルソーティングシステムとして,抗体固定マイクロ流路壁面上で作用する特異的接着力を利用する手法を提案し,プロトタイプを試作した.本デバイス内に二種類の細胞を含むプラグ状細胞群を導入し,それぞれの細胞種ことのプラグに分離可能であることを実証した.また,抗体固定に用いた機能化ポリパラキシリレン表面への抗体固定量を,水晶振動子微量天秤を用いて定量的に評価し,本材料表面に血管内皮細胞膜上と同程度の高い密度での抗体固定が可能であることを示した.
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