研究課題/領域番号 |
15108001
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
白石 友紀 岡山大学, 農学部, 教授 (10033268)
|
研究分担者 |
一瀬 勇規 岡山大学, 農学部, 教授 (50213004)
稲垣 善茂 岡山大学, 農学部, 助教授 (50280764)
豊田 和弘 岡山大学, 農学部, 助教授 (50294442)
|
キーワード | フラジェリン / FLS2 / flg22 / アピラーゼ / エリシター / サプレッサー / Cdc27B / 過敏感細胞死 |
研究概要 |
本研究では、病原微生物シグナルについて、そのシグナルが認識され植物感染の成否に至るメカニズムとともに情報伝達系を植物のオルガネラの応答及びオルガネラ間のクロストークという切り口で解明する。本年度は、1)植物細胞膜上におけるエリシターシグナル認識と植物感染の成否に関わるメカニズムの解析として、病原細菌Pseudomonas syringe pv.tabaciのフラジェリンとフラジェリンアミノ酸配列を基に作成されたflg22を用いて、flg22のレセプターであるFLS2を保持するシロイヌナズナCol-0エコタイプと保持しないエコタイプWs-0の防御応答を比較解析した。結果、フラジェリンはCol-0,Ws-0の両エコタイプにおいて活性酸素、防御応答遺伝子の発現を強く誘導するのに対して、flg22はWs-0エコタイプにおいてのみ活性酸素、防御応答遺伝子の発現を誘導しなかった。このことはFLS2に依存しないシグナル伝達機構が存在することを示唆している。2)次に、細胞壁-原形質膜クロストークによる原形質膜情報伝達系に関する解析として、昨年に引き続きアピラーゼ遺伝子に関する解析を試みている。エンドウ褐紋病菌が生産するサプレッサーは宿主植物のアピラーゼ(Apy)を1標的とし、これと同調して働く細胞壁防御応答を阻害する。実際、Apy遺伝子をノックダウンしたベンサミアーナタバコには抵抗性が一部崩壊し,病原細菌Pseudomonas syringe pv. tabaciによる激しい病徴が認められたのに対し、逆にエンドウのApy(PsAPY1)を高発現させたタバコには病原菌に対する抵抗性が獲得された。また、防御応答遺伝子PR-1の上流で働くサリチル酸を定量した結果、野生型と比べて顕著に増加しているものと、増加が認められない形質転換体があることが判明した。以上からアピラーゼは抵抗性に深く関与しているが、既知の防御応答情報伝達系とは異なる情報伝達系を制御している可能性が示唆された。3)過敏感細胞死現象においては液胞とミトコンドリア、クロロプラスト間におけるクロストークが重要である。我々は過敏感細胞死シグナル伝達と細胞周期制御因子に注目し、INF1エリシチン処理によりその発現が抑制される遺伝子として細胞周期(M期)を制御している核分裂後期促進複合体APC/Cの構成因子であるCdc27B遺伝子を同定した。そこでベンサミアーナタバコにおいてこのNbCdc27B遺伝子についてサイレンシングを試みたところDwarf表現型が現れ、さらに防御関連遺伝子群の顕著な活性化、葉でのカロース蓄積、液胞の膨張を伴う細胞死様電子顕微鏡像が観察された。この細胞死はネクロティックな細胞死及びアポティックな細胞死のどちらの特徴も見出せない新規な細胞死であり、しかもCdc27B遺伝子サイレンシング個体ではエリシチンを用いた過敏感細胞死誘導を抑制できなかったことからCdc27Bサイレンシングにおける細胞死は、従来の過敏感細胞死とは明かにその現象に違いがあり、それぞれの細胞死の病理学的かつ生理学的意義は全く別のものと考えられた。
|