研究概要 |
エンドウ褐紋病菌が生産するサプレッサーは宿主の細胞壁アピラーゼ(PsAPY1)を標的とする.今年度は,非宿主(ササゲ)からオルソログ遺伝子VsNTPase1を単離し,昆虫細胞で発現した組換えタンパク質の病原菌応答について調べた結果,推定シグナル配列の有無1次構造ならびに発現特異性などの特徴からエンドウ遺伝子PsAPY1のオルソログと推定された.また,ATPの加水分解活性を指標として,病原菌応答について調べたところ,褐紋病菌が生産するエリシターだけでなく,病原糸状菌に一般的なラミナリンやβ-1,3グルカン,疫病菌由来のINFIエリシチン,病原細菌由来のフラジェリンやハーピン,リポ多糖などに応答して活性化されることが明らかとなった.すなわち,病原体の種類や構造に明確な特異性はないが,病原体分子パターン(PAMPs)に対する初期(1次)応答を担う有力な因子であると考えられた.以上の結果は,PsAPY1高発現タバコには病原糸状菌だけでなく,細菌に対する抵抗性が付与されるという昨年度の成果ともよく一致していた.また,シロイヌナズナによるフラジェリンの認識にはフラジェリンのアミノ末端側の配列が必要であることが明らかとなった.タバコによるNFエリシチンの認識後にレクチン受容体型タンパク質リン酸化酵素遺伝子の発現が活性化することが判明した.本遺伝子産物をGFPを結合させ、融合タンパク質として発現させた結果、細胞膜に局在することが判明し,防御応答のシグナル伝達の関与することが推察された.
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