研究課題
基盤研究(S)
感染サイクルの大半を細胞外(植物表面や細胞間隙)で営む病原糸状菌や細菌をモデルとして、分子パターン認識と病原性エフェクターの作用機構について解析してきた(H15〜18年度)。今年度は、糸状菌由来エフェクター(サプレッサー)の分子標的である宿主植物の細胞壁アピラーゼの相互作用分子の解析を進め、TOF/MS解析から複数の情報伝達や酸化還元関連分子の存在を示した。また、アピラーゼで生成するリン酸は細胞壁に構成的に存在するペルオキシダーゼ(POX)依存性の活性酸素生成を亢進し、さらに一群の細胞外POX遺伝子を転写レベルから活性化することを示した。一方、表層でのパターン認識に続く過敏感細胞死の分子機構について、エリシチンをモデルに解析した結果、細胞周期(M期)制御系の構成因子NbCdc27Bは過敏感細胞死には直接関与しないが、抵抗性機能発現にそのC末端領域が必要である可能性が示唆された。また、細菌由来分子パターン(フラジェリン)による下流の情報伝達・遺伝子応答についてマイクロアレーで解析し、植物固有の転写因子WRKY41を同定した。WRKY41はフラジェリン処理で急速に発現が誘導されるが、エフェクターにより発現が抑えられる。さらに、WRKY41高発現体ではPseudomonas syringaeに対する抵抗性が増高したが、逆にErwinia carotovoraに対する感受性は高まった。この結果は、WRKY41はSA系に対して正に作用していることを示す。しかし、アピラーゼ高発現体の解析から、SA経路やJA経路とは異なる情報伝達系の存在も示されている。以上から、細胞壁には植物独自の異物認識機構が存在し、細胞壁始発のシグナルは感染防御を担う様々な細胞小器官へ情報伝達され、固有の細胞内因子の活性化あるいはフィードバック機構(増幅)を介して、最終応答(抵抗性発現)が制御されているものと考察した。
すべて 2008 2007
すべて 雑誌論文 (23件) (うち査読あり 9件) 学会発表 (16件) 図書 (5件)
Mol. Genet. Genomics 279
ページ: 303-312
ページ: 312-322
Plant Cell Physiol. 49
ページ: 81-89
In Pseudomonas syringae Pathovars and Related Pathogens-Identification, Epidemiology and Genomics (M. Fatmi, et. al. eds.), Springer
ページ: 167-173
Mol Genet. Genomics 279(3)
Mol. Genet. Genomics 279(4)
ページ: 313-322
Plant Cell Physiol 49(1)
ページ: 81-91
J. Electr. Microsc. Technol. Med. Biol. 20
ページ: 167-168
DNA Sequence 18
ページ: 152-159
Mol. Plant Pathol. 8
ページ: 365-373
J. Gen. Plant Pathol. 73
ページ: 281-285
J. Bacteriol. 189
ページ: 6945-6956
Molecular Microbiology 64
ページ: 1332-1349
DNA Sequence 18(2)
J. Electr. Microsc. TechnoL Med. Biol 20(2)
Mol. Plant Pathol 8(4)
J. Gen. Plant Pathol 73(4)
J. Bacteriol 189(19)
In Virulence of microbe and plant defense response, Hokkaido University Shuppannkai, Sapporo, (I. Uyeda ed.)
ページ: 132-143
Protein, Nucleic acid and Enzyme 52(6)
ページ: 635-641
In Dynamism of Plant-Pathogen Interactions (eds. by Y. Kubo, et. al.), Phytopathological Society of Japan (Tokyo)
ページ: 141-150
ページ: 10-21