研究概要 |
本年度は研究実施計画に基づき以下の3点について焦点をあて研究を行った。 1.C型慢性肝炎患者における樹状細胞(DC)サブセットの数的・機能的解析 末梢血単核球の中でlineageマーカー(CD3,CD14,CD16,CD19,CD20,CD56)が陰性でHLA-DR陽性の細胞をDCとし、さらにCD11cとCD123の染色性でミエロイドDC(lineage(-),HLA-DR(+),CD11c(+),CD123(+))と形質細胞様DC(lineage(-),HLA-DR(+),CD11c(-),CD123(++))を同定した。ミエロイドDC、形質細胞様DCのいずれもC型慢性肝炎患者群では非感染者群より低下していた。 2.Pseudo-HCVを用いた感染系の構築 HCVのE1E2蛋白を介した細胞へのウイルス侵入を評価できるpseudo-HCVの実験系を用いて、健常者由来の様々なDCに対する感染効率を評価した。検討したDCのなかでGM-CSFで誘導したDay 4の単球由来DCがPseudo-HCVに対して最も高い感受性を示した。 3.DCサブセットによるNK細胞活性化機構の解析 末梢血単球分画よりGM-CSFとIL-4を用いて未成熟DCを誘導し、IFNαあるいはIL-15で24時間刺激を加えた。刺激後のDCは刺激前に比し、NK細胞活性化能が増強しており、これは刺激によるMICA/Bの発現誘導によるものであった。C型慢性肝炎患者のDCはIL-15に対する反応性は保たれていたが、IFNαに対しては反応性が欠如していた。 以上の結果より、C型慢性肝炎患者ではblood DCのレベルで数的、機能的異常がみられ、またMICA/Bという特異な分子の発現が低下することによりNK細胞活性化能が低下することが明らかとなった。また、DCはある特定の成熟段階においてHCV感染に対して感受性となり、このことがDCの数的、機能的異常に関与する可能性が示唆された。
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