研究概要 |
HCV陽性ALT持続正常例(PNALT)では肝細胞障害は軽微であり、HCVに対する免疫応答の抑制機序が想定される。またインターフェロン治療によるALT正常化例では肝細胞癌の発生が抑制されることが明らかとなっている。本年度は制御性T細胞(Treg)のPNALTの病態における意義およびインターフェロン治療によるALT正常化への関与を明らかにすることを目的とした。対象はC型慢性肝炎患者(CHC群)、PNALT群、健常人(HS群)。CD4+CD25highFoxP3+T細胞の頻度は、CHC群とPNALT群でHS群より有意に増加していた(p<0.05)。CD4+CD25highT細胞におけるFOXP3 mRNA発現はPNALT群が他の二群より有意に増強していた(vs CHC群;p<0.05,vs HS群;p<0.01)。またCTLA4 mRNAの発現もCHC群より増強していた(p<0.05)。以上よりPNALTにおいて制御性T細胞の頻度が増加し、その機能に関連する遺伝子の発現が増強していることが示された。つぎにインターフェロン・リバビリン併用療法における治療効果と制御性T細胞の関与について検討した。治療開始24週目でHCVRNAが陽性の症例で、治療終了時(48週)におけるALT正常化の有無による制御性T細胞の頻度を比較した。ALT正常化例および異常例における制御性T細胞の治療開始前に対する比は8週目で1.542±0.162,0.705±0.285(p<0.05)、12週目で1.667±0.165,0.664±0.010(p<0.05)と有意差を認めた。またHCVRNA陰性化の有無と制御性T細胞の頻度に相関は認めなかった。以上の検討より制御性T細胞はHCV陽性ALT持続正常例の成立と、インターフェロン・リバビリン併用療法によるALT正常化に関与することが示唆された。
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