研究概要 |
本研究は,大学,教育,情報環境の変化に対し,日本の図書館情報学教育の現状を実証的に明らかにし,さらに,その実態調査に基づいて,課題を示し,解決を図ることを目的としている。 本年度は,これまでの2年間に行った,図書館員養成教育を行っている機関と教育担当者への悉皆調査,日本の大学図書館を対象とした悉皆調査,175自治体を対象とした郵送調査,日本全国の私立・公立・国立の小・中・高等学校の中から無作為抽出した1,042校を対象とした郵送調査,40名以上の専門家や実務者への面接調査,20機関への訪問調査,フォーカスグループインタビュー,それに,5回のシンポジウム,10回の研究会をまとめるとともに,研究分担者,研究協力者による討議を行った。 その結果,司書課程科目全般にかかわって,時間数の不足と内容の重複,開設科目としての自由度の低さ,習熟度が考慮されない,資格付与のための内容構成となっているために教授内容が司書が実際に配置される図書館の実態と乖離し,多様な職場環境における業務への対応が困難である,といった課題があり,教授内容では,印刷媒体の図書に基づいて科目の内容が組み立てられていて,情報環境の変化に対応しておらず,また,人間の情報行動への視点が極めて弱いといった問題が明らかにされた。 そこで,大学院レベルの専門職教育を想定した,コア領域,個別情報領域,情報専門職領域の三つのグループからなる科目群を整理したカリキュラム案を作成した。さらに,現在の司書養成の多様な教育体制の存在を認めた上で,「司書となる資格」に求められる専門的知識を一定の水準に維持するための「図書館情報学検定試験」(仮称)の実現を図ることを提案した。
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