研究概要 |
本研究では,光分布制御による分子群操作に基づく光・分子協調コンピューティング技術の開発を目的とし,並列光トラップによるビーズ接合DNAに対する操作方法の確立,光によるDNA反応技術の開発,分子群集合演算アルゴリズムの開発と実装,並列情報処理への応用展開をめざす.本年度の研究により得られた成果・知見は以下のとおりである. 1.DNAの反応を局所的に制御する技術として前年度に開発したレーザー照射による温度制御法を用いて,マイクロビーズに結合したヘアピンDNAと相補的なDNAをハイブリダイゼーションにより結合できることを示した.この反応は,5μm程度の分解能で制御することができた.また,より効率的な反応条件を検討し,DNAのハイブリダイゼーションとディナチュレーション反応を繰り返し制御できることを確認した.これは,DNAを用いたメモリとして利用できる. 2.高パワーのVCSELアレイと高い開口数の対物レンズを用いた光トラップ光学系を設計した.また,設計パラメータによる光学系を構築し,並列に三次元光トラップを実現できることを示した.VCSELアレイの発光パターンを順次更新することにより,三次元光トラップを維持した状態でノンメカニカルに物体を輸送できることを実証した.直径6μmのビーズを用いた時の最大速度は毎秒30μmであった. 3.最大クリーク問題を2次0-1計画問題で表現し,その目的関数をDNA分子により符号化することにより,DNAによる自律計算を可能にするアルゴリズムを考案した.また,あらかじめ数値計算により求めた解の上・下界を用いることにより,不適な解を符号化したDNAを初期段階で除去し,計算時間を軽減する方法を考案し,その効果を数値計算により評価した.
|